こんにちは。
カウンセリングオフィスボイスのうえだふみこです。
大人になってから勇気を出して、
精神科や心療内科につながりカウンセリングを受け始める人の中には、
子ども時代のつらい体験、壮絶なトラウマ体験を抱えていることは珍しくありません。
ある日、クライエントさんから言われてショックだったことがあります。
「頭では、よくなりたくて、楽になりたくて、ここに来ています。
でも、どうして傷つけられた被害者の私が、
自分のお金を使ってカウンセリングを受けなきゃいけないだろうって、納得がいかなかったんです」
驚きとともに、ある意味「だからなの?」と思ったのを覚えています。
このクライエントさんは長年カウンセリングを続けてくださっていました。
でも、カウンセラーの私から見て、
遅々として進んでいっている気がしない、
よくなっている感じがしなかったのです。
もちろん、私の力量が足りなかったことも否定できません。
でも、今は思うのです。
一番足りなかったのは、
クライエントさんがそういう葛藤を抱えていることに気づかなかったことなのだと。
この記事では、「なぜ、私が?自分のお金で?」という、あまりにも自然で、そしてとても大切な疑問について、考えてみたいと思います。
その納得のいかなさは、わがままではない
もし今、これを読んでくださっているあなたが、
同じようなモヤモヤや怒りを感じていたとしたら、
お伝えしたいことがあります。
「そう思うのは、当然のこと」ということです。
なぜならば、子ども時代に受けたトラウマや傷つきは、
本来は子どもを守るべき大人や環境によってもたらされたものだからです。
あなたには何の非もなく、ただ守られるべき子どもだったはずです。
それなのに、大人になった今、
過去の傷つきのせいで生きづらさを抱えたり、
人間関係で苦労をしたりする。
そして、その傷を癒すために、自分で稼いだお金を削って、
貴重な時間とエネルギーを使ってカウンセリングを受けなければならない。
冷静に考えたら、ものすごく不条理なことです。

「なんで、被害者の私が、こんなに損をしつづけなきゃいけないの?」
「加害者はいるのに、自分のケアに私が身銭を切らなきゃいけないの?」
そう怒りたくなるのは、あなたの心が健全な証拠でもあります。
理不尽なことに対して、「理不尽だ!」と感じる力は、あなたの大切な心のセンサーです。
治療費を払うことが、過去の痛みを思い出させる?!
カウンセリングには、お金がかかります。
健康保険が効かない自費診療の場合は、なおさらです。
そのため、継続するにはそれなりの経済的な負担が必須になります。
日々仕事を頑張りながら、
もしくはなんとか生活を維持しながら、
カウンセリングを受けるたびに、
こんな気持ちがよぎることがあるかもしれません。
また治療費にお金が減っていく・・・
なぜ、私だけがお金を払って、苦労しなければならないんだろう・・・
自分のお金を払うという行為が、
皮肉なことに「過去に受けた理不尽な被害」や「これまでの不当な扱い」を生々しく思い出す引き金になってしまう。
このお金があったら、もっと別の楽しいことに使えたのに・・・
ほしいもの、買いたいものが買えたのに・・・

そう思うと、治療そのものに対する抵抗感がふつふつと湧いてきて、
「もうやめてしまいたい」「意味がない」と投げやりな気持ちになることもあるでしょう。
お金や時間、エネルギーという大切なリソースを削る行為は、
それほどまでに私たちの心の負担や安心感と深く直結しているのです。
自分のお金でカウンセリングを受けることの意味
では、理不尽さを抱えたまま、
私たちはどんな気持ちでカウンセリングに向き合えばいいのでしょうか。
ここで、少しだけ視点を変えてみる提案があります。
カウンセリングに払うお金は、
「過去の傷を自分で尻ぬぐい」している感覚があるかもしれません。
でも、「自分の未来と尊厳を取り戻すための先行投資」として捉え直してみるのです。
子どもの頃にトラウマを受けた人は、
長い間、自分の人生のハンドルを他人に握られてきました。
「親の機嫌をうかがう」
「理不尽な暴力や言葉に耐え続ける」
「自分の気持ちを押し殺す」

人生の主導権が、自分以外の誰かに奪われていたのです。
カウンセリングを受けることは、
最初は「行かされている」「通わされている」感覚があるかもしれません。
でも、もしあなたが「自分のために、時間とお金を使ってみよう」と選んだとしたら、どうでしょう?
それは、自分のために、自分のリソース(資源)を使うという、
主導権を取り戻す瞬間になるはずです。
誰かのために我慢するお金ではなく、
過去の加害者のためでもなく、
今、ここに生きている私が、これからの人生を少しでも楽に、少しでも心地よく生きるためにお金を使う。
それは、ある意味、あなたを縛り続けてきた過去に対して、
「私は自分のお金と時間を使って、私の味方をする」という決意でもあります。
それでも、納得できない自分をどうすればいいのか?
そうは言っても、納得のいかなさはあなたの心の中から簡単には消えないかもしれません。
そんなときは、「納得がいかない!」「なんで私ばかりが!」という、
怒っている自分を自分の中のひとつの大切なパーツ(部分)として眺めてみてください。
あなたの中には、こんなパーツはいませんか?
「これ以上、理不尽な思いをしたくない」と怒りが収まらないパーツ
「本当は守ってほしかったのに」と泣いているパーツ
「こんな人生に誰がした」と責めたいパーツ
あなたが感じる怒りや納得のいかなさは、
決して「なくすべきもの」ではありません。
過去に理不尽な傷を負ったあなたを、
今日まで必死で守ろうとしてきた、
プロテクター(防衛パーツ)の叫び声なのです。
もし、その叫びに気づいたら、
心の中でこう声をかけてあげてほしいのです。
「そうだよね、納得いかないよね。怒りたくなるのも当然だよ」
「今までずっと、私を守ってきてくれてありがとう」
怒りを抑えようとしたり、
無理にポジティブ思考に切り替える必要はありません。
「納得がいかない自分」を否定するのではなく、
「あぁ、私を守るために今、このパーツが怒ってくれているんだな」と、
ただその存在に気づいて、横にそっと寄り添ってあげること。
その内側からの対話こそが、
他人に握られていた人生のハンドルをご自身の手に取り戻す、第一歩になります。

理不尽な世界の中で、自分を見捨てずに生き延びてきたこと。
そして今、自分のお金と時間を使って、自分のために生きようと決めたこと。
あなたがご自身のペースで、傷ついたパーツたちと一緒に歩んでいくその道のりを、
私はここで支えていきたいと思っています。
まとめ
冒頭でお話ししたクライエントさんは、カウンセリング代を払うときのやり場のない怒りと葛藤を長い間抱えていました。
でも、「過去の不条理への怒り」を抱えた自分を受け入れ、心の安全やリソースを少しずつ整えていく中で、変化が訪れました。
「自分のために、この時間とお金を使っていいんだ」
そう思えたとき、
これまで止まっていたかのように見えた治療の時間が、少しずつ動き出しました。
そして、「過去の清算のため」ではなく、
「自分の未来のため」という姿勢へと変わっていったのです。