こんにちは。
カウンセリングオフィスボイスのうえだふみこです。
カウンセリングに通ったり、
本を読んでセルフケアを試したり、
呼吸法やストレッチをしてみたり・・・
「よくなりたい一心で、今まで本当にたくさんの方法を試してきた」
「だけど、どれをやっても、いまいち効果が実感できない」
こんなふうに、
「私は何をやってもダメなのかもしれない」と、
途方に暮れていませんか?
これまで多くの熱心なクライエントさんとお話をする中で、
「色々な対処法を試したけれど、やるべきことが多すぎて、かえって疲れてしまった」
というお声も耳にしてきました。
もしかすると、問題は「どの方法を選ぶか」ではなく、
「やることが目的になってしまい、一番大切なプロセスをすっ飛ばしていること」にあるのかもしれません。
この記事では、トラウマケアやストレス対処を頑張っているのに、なぜか効果を感じられない・・・
そんなあなたに向けて、対処法における大切な心構えについてお伝えしますね。
「作業をこなすこと」が目的になっている?!
心が苦しいとき、私たちは1秒でも早くその苦しみから逃れたくて、
藁をもすがる思いでいろいろな対処法をさがしますよね。
・不安になったら、この呼吸法をする
・パニックになったら、グラウンディングをする
・ごちゃごちゃした考えを、ノートに書き出す

どれも専門的には、「おススメ」な対処法です。
でも、ふと自分を振り返ってみると、こんな状態になっていませんか?
「とにかくこの不安を消したいから、やらなきゃ!」
「手順通りに最後までやり切った。よし、これで大丈夫なはず・・・あれ、まだ苦しい?」
ここで起きているのは、
対処法が「こなす作業」になってしまっていること。
例えるなら、お医者さんから出された薬を、
自分の身体の状態をあまり見ないまま、
ただ時間通りに飲み干しているような感覚です。
「これをやれば楽になるはず」というゴール(結果)だけに意識が向いてしまうと、
何かがすっぽり抜け落ちてしまう。
その「何か」とは、「自分の内側で何が起きているのか」という実感。
「ちょっとましになった」を味わうということ
クライエントさんの中には、まるで「完璧な対処法があれば、
症状を消し去ることができる」と思っている人もいるようですが・・・
トラウマケアやストレス対処の本質は、対処法そのものにあるわけではありません。
対処法を使ったあとに、
自分の身体や心の中でほんの少し起きる変化、
「ちょっとましになった」変化に気付くことです。
そして、その変化にゆっくりとどまって、じっくり味わうことです。
たとえば・・・
・さっきまでバクバクしていた心臓の鼓動が、ほんのちょっとだけ、ゆっくりになった気がする
・肩に力が入っていたのが、少しだけゆるんで息がしやすくなったかも
・「もうダメだ」と思っていた頭の中に、ほんの少しだけ隙間ができたような気がする
こういう、「ちょっとだけど、ましになっているかも」という微細な感覚を、
その場でしっかりと感じ取る、味わうことです。
「ちょっとましになった感覚を味わうプロセス」こそが、
傷ついた神経系が、「あっ、安全なんだ」
「自分で自分のことを、少し落ち着かせられるんだ」と、
学習していくのです。
これが本当の意味で、回復へとつながっていきます。

ところが、嫌な感覚をすぐになくすことを目標にすると、
「まだ治らない!」と焦ってしまい、
この「ちょっとましになった感覚」を味わう間もなく、
次の行動に移ってしまいます。
これでは、せっかく身体が「安全」をつかみかけているのに、
そのチャンスを自分でスルーしてしまっているようなものです。
「やり方」を変えるより、「味わい方」に目を向けてみる
もしあなたが、
「今まで色々な方法を試してきたけれど、効果がなかった」と感じているなら、
新しいノウハウや、もっとすごい方法を探す必要はありません。
変えるべきなのは方法ではなく、
「取り組んだあとに、自分をどう扱うか」という姿勢です。
呼吸法や、身体の感覚に注意を向けることであっても、
何か一つの対処法をやってみたとき、
そこで終わりにしないで、
少しだけ立ち止まってみてください。

「これをやってみて、今、私の身体は、どんな感じがしているかな?」
「ほんの少しでも、ましになっているところはあるかな?」
そうやって、自分の中のわずかな変化に耳を澄まして、
その感覚を「これで、いいんだよ」と、心の中でそっと受け止める。
この「味わうプロセス」を丁寧にはさむだけで、
同じ対処法であっても、
身体への根付き方が変わってきます。
あなたのペースで、あなたの身体と対話してくために
トラウマケアは、一瞬にして痛みを消し去るような魔法なんかではありません。
傷ついた神経系や心が、
「もう無理をしなくても大丈夫」
「自分の足で、自分の安全を取り戻せるんだ」と、
一歩ずつ思い出すためのプロセスです。
もし、どうしても一人では「どうやってその感覚を味わったらいいのか、分からない」
「つい焦ってしまって、自分で自分を落ち着かせることなんてできない」
と感じていたとしても、
あなたが悪いわけでも、
方法が間違っているわけでもありません。
ただ、「味わうプロセス」を一緒に見守って、
ガイドしてくれる存在がそばにいないだけなのかもしれません。
当オフィスでは、頭で考える対処法にとどまらず、
身体や心の中で起きている変化を一つひとつ丁寧に、
ひも解いていくアプローチをとても大切にしています。
「今まで何をしても変わらなかった・・・」という、
その頑張りの歴史こそが、
あなたがどれほど真剣にご自身と向き合ってきたかの証です。
その頑張りの方向を、
少しだけ「結果を急ぐこと」から、
「今の自分を味わうこと」に変えてみましょう。
あなたのペースで大丈夫です。

まとめ
「変わりたい」と願い、
これまでたくさんの方法を試してきたあなたのその努力は、
決して無駄ではありません。
大切なのは、
結果を急いで作業(対処法)をこなすことではなく、
やったあとに訪れる「ちょっとましになったかも」という微細な感覚を、
ただ丁寧に味わうこと。
そして、お気に入りの方法を、
ご自身のペースでゆっくりと練習していくことです。
新しい、すごい方法を探さなくても大丈夫。
どうか今日の小さな変化に、
あなたのペースで、
耳を澄ましてあげてくださいね。
<文献>
服部信子(2023):フラッシュバック対処と予防.