誰も傷つけないで怒りを出す方法とは?

こんにちは。カウンセリングオフィスボイスのうえだふみこです。

怒りをストレートに出してしまったために、職場や家庭で大切な人との関係が修復できないくらいにこじれてしまった・・・。

いつも怒りを自分の中に抑え込んでいて、お腹が痛くなったり、腰痛に悩まされている・・・。

怒りは我慢するものと思われがちですが、きちんと向き合うことが大事です。
そう、「きちんと」です。

この記事では怒りの役割と健康的な怒りの出し方についてお伝えしますね。

怒りは何を伝えている?

「怒り」は二次感情。
二次ってことは、一次があるということです。
一次感情に気付かないと、火山が噴火するように怒りは爆発してしまいます。

怒りは氷山の一角

怒りはよく火山に例えられますが、氷山の一角でもあります。
目に見えている部分は一部に過ぎなくて、見えていない下の部分にはもっと深い感情が隠れています。

たとえば、パートナーの帰宅が遅いとき「なんでもっと早く帰ってこれないの?」と責める。
このときの一次感情って「私はずっと一人で待っていたのに」という寂しさだったり、「寄り道してきて自分だけ遊んできたんでしょ」という不信感だったりする。

「寂しい」「不安だな」「悲しい」「苦しい」・・・
こういう一次感情に気付かないままだと、最後に怒りは火山となって大爆発して周りはマグマだらけってことに。

怒りはあなたを守ろうとしている⁈

ともすると厄介な感情である怒りには、実は役割があるのです。
「お腹が減ったらご飯を食べる」「眠くなったら寝る」のと同じように、怒りも自然な身体の反応です。

嫌なことをされたり言われたり、不当な扱いを受けたりしたときに、頭にくる、腹が立つのはごく自然なこと。

何事もなかったようして平気な顔をしていると、相手からは「この人には何を言ってもいい」と思われて、もっと嫌な思いをすることになってしまいます。
そんな思いをさせないために怒りはあなたを守ろうとしているのです。

大事なのは怒りをそのまま誰かや何かにぶつけたり、ぐっと我慢したりするのではなく、きちんと向き合うこと。

怒りの出し方”あるある”パターン

怒りを感じている相手に直接気持ちをぶつけられたらスッキリしそうですが、現実にはそれができないから困るのです。

怒りのマグマはものすごく高いエネルギーを持っているので、抑えるのはとても難しくて、人やモノ、もしくは自分へと矛先が向きます。

外に向くパターン

家族や友だち、本当は傷つけたくない人につい八つ当たりしたり、困らせたりするのは誰しもあることです。
親しい人は許してくれることが多いので、怒りの矛先が特に向かいやすい相手となります。

近くに家族や友だちがいない場合は、職場の後輩や同僚、飼っている動物など、力関係において自分より弱い立場の存在が怒りの対象になることも。

それもできないときは、匿名性の高いSNS上で他人を誹謗中傷する形となって出ることがあるかもしれません。

内に向くパターン

怒りを外に向けるのは周りを巻き込むリスクが高いので、自分へと内側に向くことがあります。

たとえば「自分はダメな人間」「私なんていない方がいいんじゃないか」と自分の全人格を否定したり、自傷行為で自分を傷めつけたり。
この方が他人を巻き込まない分「ましな方法」と思っているかもしれません。

ただ一時的には気持ちを収めることはできても、このパターンを繰り返すことによって自己否定が強くなって、自傷行為がエスカレートすることも珍しくありません。

怒りの健康的な向き合い方とは?

怒りが外に向く場合も、内に向く場合も、結果的に自分に不利な結果となってしまいますが、そのときはただそうするしかなくて、他の選択肢を持ち合わせていないのです。

ここでは別の選択肢として健康的な向き合い方をご紹介します。

本当に伝えたいことは何なのか探る

怒りは二次感情なので、その下にある一次感情に気付くことが第一歩。

「私はどんな気持ちだったんだろう?」「本当はどうしたかったんだろう?」
自分の心の声に耳を傾けてみる。

帰宅時間が遅いパートナーを責めたけど、本当は「寂しいから、もっと早く帰ってきてほしかった」「遅くなるってひとこと連絡してほしかった」など、自分がしてほしかったことや満たされない思いが浮かびあがってきます。

すると「そうだったんだ」と腑に落ちて、気持ちが落ち着く。

身体の余分なエネルギーを解放する

「かちんと来る」「怒り心頭」「腹の虫がおさまらない」
怒りを表す表現はいくつもあるように、怒りと身体は切っても切れない関係。

なので怒りとうまくつきあうためには「怒ってはいけない」と意志の力で抑えようとするのではなく、身体の感覚に意識を向けて怒りを静かにゆっくりと感じることがポイント。

まずは深呼吸。
怒っているときは交感神経が高ぶっているので、呼吸は浅くて速い。
そこで吸う息よりも吐く息を気持ち2秒くらい長めにすると、副交感神経が刺激されて心拍数が下がるので落ち着きやすくなります。

怒ると手にも力が「ぎゅっ」と入って瞬時にエネルギーがたまります。
手のひらをグーパー、グーパーとゆっくり広げたり握ったりすると余分なエネルギーを指先から解放させることができます。

お皿や窓ガラスを割った方が気持ちはスカッとしそうですが、このやり方は交感神経を余計に高めてさらに怒りが強くなるので、おすすめできません。

代わりにペットボトルやプチプチ(荷物を梱包するときに使う緩衝材)を握って、両手でぞうきんをしぼるようにゆっくり力を入れてから緩めると、息が「ふっ」と抜けるのを感じられるでしょう。

まとめ

怒りにはあなたが気付いていないメッセージや役割があります。
そのことに気付くと怒りは「我慢するもの」ではなく、「探求するもの」へと変わっていきます。

今までやったことのない対処法を試しても、すぐに効果は感じられないかもしれません。
だから10回のうち1回でもできたら◎です。

身体の中に閉じ込められた余分なエネルギーを少しずつ解放して、心と身体の落ち着きを感じてみましょう。

<参考文献>
浅井咲子(2017):「今ここ」神経系エクササイズ.梨の木舎.

上田 富美子(うえだ ふみこ)

心理学の知識やスキルを日々の生活で活かして、心も身体も健康になって、人生を豊かにしたい人のためにブログを書いています。

臨床心理士・公認心理師・SEP(ソマティック・エクスペリエンス・プラクティショナー)

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