ストレスにまつわる見逃されやすい考え方とは?

こんにちは。カウンセリングオフィスボイスのうえだふみこです。

あなたはストレスについてどんなイメージを持っていますか?
「ストレス発散」「ストレス解消」と言うとき、「ストレスは悪者、あってはいけないもの」という前提がありますが、はたしてそうでしょうか?

この記事では、ストレスにまつわる見逃されやすい考え方とストレスと上手につき合うための考え方についてお伝えしますね。

ストレスは悪者?

「ストレスは悪者」として見るのはある意味正しいのですが、それだけではストレスの一部を語ったにすぎません。
なぜなら、ストレスには悪いストレス(destress:ディストレス)と良いストレス(eustress:ユーストレス)の2種類があるからです。

悪いストレス(destress:ディストレス)

「暑すぎる」「寒すぎる」「うるさい」など物理的なものや、悲しい経験や嫌な出来事などから受ける過度なストレスは悪いストレスです。
これは日常的によく言われるストレスです。

その一方で、「暇すぎる」「誰とも会わない」「何もすることがない」など、刺激が少なすぎるのも悪いストレスになります。

たとえば、新型コロナ感染により、在宅のリモートワークになって誰とも会わない日が長く続くと、しだいに気分が落ち込むのは、刺激が少なすぎることによるストレスと言えるでしょう。

今まで意識はしていなくても、何気ない同僚との雑談、人の気配を感じる職場での仕事は、実は適度な刺激になっていたのかもしれません。

良いストレス(eustress:ユーストレス)

このような適度な刺激こそが良いストレスなのです。
無理をしないで楽しめる程度の運動や、今までしたことのない仕事に挑戦することもほどよい刺激になるでしょう。
良いストレスは生活に充実感をもたらしてくれたり、成長するための糧とさえなることも。

ストレスはありすぎてもなさすぎても悪いストレスになりますが、適度な刺激であれば良いストレスになります。
ストレスを悪者として決めつけるのではなく、いかに適切な範囲におさめてうまくつきあっていけるかという視点が大事です。

ストレスとどう付き合っていく?

どうせストレスとつきあっていくなら、うまくつきあいたいもの。
では「うまくつきあう」とはどういうことでしょうか?

ストレスのサインに気付く

まずストレスのサインに気付くこと。
「えっ、たったそれだけでいいの?」って思いますか?
でも、すぐに気付かなかったり、気付いても何もしないで放置するからこじれるのです。

たとえば自覚症状がある病気なら、早く気付くことができるのでその分早く対処できますよね。
でも自覚症状がない病気の場合、健康診断などを受けない限り気付く機会がないので対処も遅くなります。

ストレスのサインも同じで、早く気付けるとストレスが小さいうちに対処できます。
あなたがストレスを抱えているときは、どんな形で現れやすいでしょうか?

<思考に現れるサイン>
・頭が働かなくて何も考えられない
・自分を必要以上に責める
・ネガティブ思考から抜けられない
・自分がどう思われているのか気になって仕方ない

<感情に現れるサイン>
・そわそわして落ち着かない
・やる気が出なくて何をするのもおっくう
・ささいなことでイライラする
・訳もなく悲しくなって涙が出る

<行動に現れるサイン>
・甘いもの、コーヒーやエナジードリンクなどカフェインの摂取量が増える
・衝動買いをする
・お酒やタバコの量が増える
・生活リズムや睡眠リズムが崩れる

<身体に現れるサイン>
・朝つらくて起きられない
・眠れない、寝すぎる
・食欲がない、吐き気がする
・頭痛、腹痛、肩こり、腰痛など痛みがある

ストレスが小さく見える工夫をする

ストレスのサインを早期発見すると早期対応につながりますが、実際にはストレスを小さくしたくてもできないことはよくあります。

たとえば職場でこんなことはありませんか?
・慢性的な人手不足で仕事量が増えて、自宅に持ち帰ってなんとか間に合わせている
・新人スタッフの教育係を任されて、何度も同じことを言って教えなくてはいけない
・苦手な同僚と同じプロジェクトの担当になって、コミュニケーションがスムーズにいかない

こういうストレスは、自分以外の人や職場の環境が関わっているので、自分だけでどうにかするのは難しく、ストレスを小さくしようとしてもなかなかできません。
では、どうしたらいいでしょうか?

過度のストレスにさらされているときは「どうしていいか分からない・・・」となってしまいますが、「なんとかなる!」と思える状態にすることです。

たとえば、地震や台風などの自然災害の場合。
災害を人間の力で止めることはできませんが、防災グッズを常備しておいたり、災害保険に加入したりして、私たちは「なんとかなる!」と思える状態にして対策をとります。

あなたの抱えるストレス要因を減らすことはできなくても、たくさんの対処資源を持って「なんとかなる!」にすることはできるのです。

ストレスとどう付き合ってきた?

「たくさん対処資源を持つ」と言われても、何も思いつかないかもしれません。
でも意外にあなたの身の周りや過去の体験の中に対処資源は埋もれています。

ここでは、2つの資源をふりかえってみましょう。

対処資源1:「私」のまわりの助けてくれそうな人

ストレスを感じた時に助けてくれそうな人は誰ですか?

「本当に助けてくれるかどうか」よりも、あなたが「この人だったら、助けてくれる」と思える人です。
あなたの心の中に住む安心感の源と言ってもいいでしょう。

実際に手助けしてくれる存在も必要ですが、心の支えになる存在をイメージすると不思議と頑張れることってありますよね。

たとえば・・・
好きなアーティストの言葉、亡くなったおばあちゃんの笑顔、映画の中のヒーロー、辛苦をともにした学生時代の友だち。

対処資源2:克服した過去の体験

今までストレスを感じたときにどうやって克服してきましたか?
「もう二度とあんな思いはしたくはないけど、あの経験があったからこそ今の自分がある」と思う出来事は、あなたを成長させる経験にもなっているはずです。

蓮はきれいな水ではなく、泥水の中だからこそ美しく大きな花を咲かせると言われますが、あなたの過去の苦難の経験が現在の強みとなっているかもしれません。

「今」がつらすぎると「過去」のことに思いをはせる余裕はなくなりますが、「過去」の中にある資源をふりかえってみましょう。

まとめ

ストレスには「悪いストレス」と「良いストレス」があります。

たくさんありすぎても少なすぎても「悪いストレス」になってしまいますが、適度な範囲におさめることができれば、「良いストレス」となり私たちの生活に張りや生きがいを与えてくれる材料にもなります。

「良いストレス」に変えていくには、「どうしていいか分からない・・・」から「なんとかなる!」と思える状態にすることを意識してみてください。

ストレスにさらされると無力感を抱きやすくなりますが、自分をとりまく周りの人や過去の乗り越えた体験の中には、「なんとかなる!」と思える資源がたくさん詰まっているはずです。

ストレスに圧倒されているときこそ、あなたがすでに持っている資源に目を向けてみてくださいね。

上田 富美子(うえだ ふみこ)

心理学の知識やスキルを日々の生活で活かして、心も身体も健康になって、人生を豊かにしたい人のためにブログを書いています。

臨床心理士・公認心理師・SEP(ソマティック・エクスペリエンス・プラクティショナー)

関連記事

PAGE TOP