こんにちは。カウンセリングオフィスボイスのうえだふみこです。
「みんなの前では友好的に接しておきながら、1対1になると嫌味を言ったり、無視をする」
「誰かに聞いたうわさ話や陰口を心配を装いながら、わざわざ耳に入れてくる」
「忘れたふりをして、約束の日時を知らせてこない」
やられた側にしか分からなくて、まわりには気付かれにくい攻撃。
そう、それは「受動攻撃」という名の攻撃なんです。
やり方が直接的ではなくて遠回しだから、誰かに話しても「気にしすぎなんじゃない?」と言われそうで、相談するのもためらってしまうけど・・・
もしあなたがこんな状況だったら、「受動攻撃」を受けていると思っていい。
『彼を知り 己を知れば 百戦殆(あや)うからず』
孫氏のこの言葉は
戦いにおいては、敵情を知り、自分のことを客観的に知ることの大事さを教えています。
受動攻撃を理解して対処するためには、まず相手を知ることは欠かせません。
この記事では、高校時代に受動攻撃に悩んだ私が、攻撃する心理やその対処法についてお伝えしますね。
攻撃しやすい相手
学校や職場など集団のなかで、他にも人はいるのに「なぜ私?」と思ったことはありませんか?
動物の世界を見ると分かるように、攻撃する側は勝ち目のない戦いはしないもの。
自分より強い者を攻撃したら、やられてしまうリスクが高くなり命を落とすかもしれません。
人間の場合はこれほどあからさまではないにしても、子どものいじめや大人のパワハラは同じ構図をたどっていると言えます。
共通しているのは、力関係において自分より「弱い」とか、「下」と見なした相手、反撃してこない相手を攻撃の対象としていること。
あなたが受動攻撃を受けていたら、すごく嫌かもしれないけど「攻撃しやすい相手」として選ばれている可能性が高い。
私自身、高校時代に同じグループ内の一人の女子に無視されていた時期がありました。
当時は自分が相手にどう映っているかなんて考えたこともなく、学校では誰にも話せず、家に帰ってから家族に吐き出して身を保って過ごした日々。
そんなある日、私以外にも無視されていた子がいることを知ったのでした。
「あなたもだったの?」と思った次の瞬間、「選んでやってるな」と合点がいったのです。
というのも、その子も私のように反撃するタイプではなかったからです。
「私、なんかした?」という答えのない問い
無視されるのは金輪際ごめんだけど、相手が人を選んでやっているという分析ができた時、私は少しだけ気持ちが楽になったのでした。
なぜならば、それまでの私は「何か相手の気に障るようなことをしたのかもしれない」と、ベクトルが完全に自分に向いていたからです。
むしろ私のように、自分の中に落ち度を見つけようとする相手を彼女は選んでいたのだと思います、それも無意識的に。
いずれにしろ、私だけの問題でもなさそうだと思えたことは救いでした。
それを裏付けるかのような出来事が。
理由も分からず来る日も来る日も無視されつづける中、直接話しかけるわけにもいかないので、彼女に手紙を渡しました。
自分がどんな内容を書いたのか今となっては覚えていません。
ただ、相手からの返事の手紙には、「自分がなぜそうするのか分からない」という趣旨のことが書かれていました。
到底そんな言葉で納得できるはずがありません。
でも、そこにはうそ偽りのない、本当の気持ちを表現している真摯さのようなものが行間から伝わってきたのを覚えています。
当時の私は冷静に考えることなんてできなかったけど、彼女も心に何かしら抱えていたんだなと今なら想像できます。
受動攻撃をする人が抱えるもの
攻撃する人が抱えている感情って、何でしょう?
怒りはその代表的なものだけど・・・
怒りとは「二次感情」で、その奥底にはもっとふか~い「一次感情」が潜んでいます。
では、一次感情とは?
たとえば・・・
聞いてもらえない不平不満
見通しの立たない先への不安
晴らせない恨み
ジリジリするような嫉妬心
癒されていない悲しみ
子どもの頃からの劣等感
温存してきた憎しみ
など・・・
こういう感情たちは、自分でも直面するのが嫌だから気づきにくい。
というか、自分がこんな感情を持っているなんて認めたくないですよね。
例えて言うなら、怒りは火山。
火山の下のマグマ部分は見えない一次感情です。
マグマだまりが存在することは頭では分かっていても、見えるわけではないから、自他ともに気づきにくい。
そして、噴火した部分は二次感情。
怒っている自分もそれを見ている側も気付きやすい。
私を無視していた子が心の奥底にどんな気持ちを抱えていたかは分かりません。
でも、それは私だけでなく、彼女自身もだったと思うのです。
「自分がなぜそうするのか分からない」
彼女の手紙は、そのことを伝えていたのでしょう。
受動攻撃から抜け出るためには?
いくら受動攻撃をしかけてくる相手が心理的な課題を抱えているからって、実際の攻撃がやまなければ、本当の意味では解放されません。
特効薬や万能薬はないけれど、少しでも受動攻撃から抜け出すための対策をとってみましょう。
違和感に気付く
誰だって自分が攻撃されているなんて思いたくないし、受動攻撃は分かりにくいだけに、「考えすぎかな?」「思い違いかな?」と処理してしまいがち。
頭の中で片付けたつもりでも、あなたの胸の内にはなんとも言えない「いや~な感じ」が残っているはず。
その不快感や違和感をしっかりキャッチして、流さないこと。
悪意のない攻撃だったら、こういう感覚はわきにくいはずです。
記録を振り返る
たとえばDVを受けている場合。
自分の被害を証明するためには「いつ、どこで、どんなことを、どんなふうにされたのか」を録画やメモ、日記などの記録に残すことが有効。
受動攻撃の場合は別に裁判沙汰にするつもりじゃないから、記録まで残す必要があるのか疑問に思うかもしれません。
でも記録を残す目的は被害を証明するためだけではなくて、もう一つ大事なことのためなのです。
それは、記録を読み返して、「ひどいことをされている」と認識するため。
受動攻撃はしっぽがつかめないからこそ、「まあ、いいか」と諦めモードに入りやすく、無力感だけがつのっていく。
そうなると現状から抜け出ようとする気力までも奪われていく。
自分の被害者性をきちんと認識できればこそ、「どうにかしよう」という気持ちにもなれるのです。
「黙っていない相手」と思わせる
職場でも他の部署よりは同じ部署。
家族でも別居よりは同居。
学校でもただのクラスメイトよりは同じグループ。
人間関係のもつれって、「親しい間柄」だからこそ起きますよね。
でも、距離を取ろうにもなかなか取れないし
平和にしたい思いから、つくり笑顔で接したり、自分から相手の「下」に入って媚びたりするかもしれない・・・
ただ、これでは相手の行動を助長してしまいます。
受動攻撃する人は自分より「弱い」「下」と思った相手、「反撃しない」相手を選んでいるので、そう思わせないようにすること。
たとえば・・・
相手と話をするときは、「うなづき」や「あいづち」を控えるなどして、できるだけ反応を薄くしたり、うわの空で聞いてみる。
「いい関係を築きたい」「お近づきになりたい」と思う人と話すときとは、逆のことをするのです。
ほかにも・・・
直接「やめてください」とは言えなくても、メールなどで間接的に伝える。
自分よりも立場の強い人に訴えて力を借りる。
受動攻撃をする人は、気付かれないようなやり方でしか攻撃できない小心者で、まわりからの自分の評価を気にする傷つきやすい側面を持っています。
なので、第三者からの介入は思った以上に有効です。
ポイントは直接的であれ、間接的であれ、「黙っていない相手」と思わせることです。
まとめ
「いるよね、こういう人」
「受動攻撃」という言葉をはじめて知ってから、数年しか経っていないけど
こういう陰湿な攻撃をする人は子どもの頃からどこにでもいました。
「受動攻撃」というラベルがつくことで、人の意識に引っかかり、問題として認識されやすくなります。
そして、気付かれにくいからこそ、穏便に済ませようとしない姿勢を持つことです。
<参考文献>
大鶴和江(2024):「ずるい攻撃」をする人たち.青春出版社.